見る角度が変わると全然違うものが見える話

 群盲、象を撫でる、みたいな。10円玉を語るのに、上から見たら円だけど、横から見たら長方形ですよね、という話。違うか。

アメブロPV水増し問題】騒ぎ過ぎな件
http://d.hatena.ne.jp/webad/20090619/1245428902

 アメブロの件は、普通にネット業界の従来の目線だったらここに書いてあるような「何が問題なの?」という話で終わる。でも、いわゆる「業界の健全化厨」が力を持ってきたので、いろんな意味で大変なことになりつつあるというのが現状。本当に騒がれるのはこれからでしょうね。

>俺のブログのPVが嵩上げされてたってこと?について

 これはもう全然駄目な話です。でっち上げのPVを和算して、メディア全体でこれだけのPVが出ているので、枠を引き取ってねという営業をしている以上は。というか、一日20万PVある芸能人ブログがあるというので金を払って広告出してみたら、キャンペーンサイトに誘導されて来たのが百人程度だったとかありえないわけじゃないですか。これは一昨年の話ですけどね。

 「botをカウントしない仕様のほうがわかりやすいし、ちゃんと説明しておいたほうがよかったよね。という程度のはなし」ではありません。今回、ネットが外部的に見て分かったのがBOTによる水増しの話だった、というだけであって、金を払って広告を出す側の議論は「アメーバブログを含め、幾つかの大手サイトの広告効果が異常に低い」ことが問題になっているわけでね。他にも、CAが率先してダンピングするし、そもそもバイト雇って架空クリックで「前科」があるので、もっときちんと襟を正してほしい、というのが業界の一般的な考え方なんじゃないでしょうか。

 「ちゃんと説明したらよかったのにね」というのはもうお金を払っちゃって、薄い広告効果しか得られなかった広告主からすると激怒する話だと思います。コンプライアンスから考えて、実名ではてな書いてなくて良かったねレベルの内容かなあと。

>広告主はbotに対して広告費払ってるけどいいの?それって詐欺じゃね?について

 「PVとimpの混同」と書かれてますけど、CAのアメーバ広告枠の売り方を知っていて書いていますか? 媒体資料、ちゃんと読んでますか? 次に、「サイト全体のPV数が多いほど各広告メニューの価格があがるという誤解」とありますが、誤解というのは何ですか? 支持され多くの人が読んでいるメジャーサイトだからアメーバに記事広告出しませんか、という営業をしているんですよ、彼らは。誤解をさせているのはCAの営業方針そのものじゃないですかね。

 「その分、率が4倍から5倍低下することになるので、そのうちどの広告主からも代理店からも見放されて売れなくなるから心配いらない」というのはもっともで、率で言うなら12分の1から14分の1ぐらいまで低下している場合もあるのが現状だと思います。広告主もそれなりに横のつながりがありますから、なかなか売れない。

 でも、代理店がそっぽを向いても、CAは自前でどっか売ってくるんですよ、たぶん、恐ろしいぐらいの安値で。PVあたりで見れば、なんじゃこりゃというような単価で売っているのでしょう。売れないから値下げしている部分もあると思うんですが、これのお陰で純粋にPV量り売りしているサイトが引っ張られて、より安い値段を顧客から求められるようになっている。もちろん、クライアントの質にもよるし、CAはCAなりに考えてやってきているわけで、そこは文句は言えないけど、困るものは困りますね。

 当然、最近ではあまり相手にされないこともあって、広告がそれほど順調には入らないですね。トップにもタレントブログにも、ナショナルクライアントは入ってこないっス。

http://ameblo.jp/
http://ameblo.jp/sasaki-nozomi/

>めちゃめちゃ多額の広告費を使って広告枠を1社で買い切ったりしたらフリークエンシーの問題が出てくるけどあんまりないケースだと思うので取り合えずスルーします

 ええ? 去年まではメガサイトの広告枠は買い切りしているところが出て、そこから逆算して他サイトの広告単価も出したりSEMの予算を付けるのがそれなりに一般的な方法として定着していたんじゃないですかね、売り手側としては。あんまりないケースどころか、電通としてはまさに直撃の話題だと思いますけどね。だから、来期mixiとかDeNAとか、どうなってしまうのか、いまから注目しているんだと思いますけれども。

 adwordsも単価下がっているので、今後も価格支配力のあるメガサイトの枠買い切りの話はそこそこの頻度で出てくるのではないでしょうか。

>ちなみに実際の現場でも、サイト全体のPV数なんてだれもほとんど気にしない。

 これ、どこの現場ですかね…。サイトの大きさや、タイアップのような、imp量り売りではない大型広告の場合は、サイトの規模やタイアップの性質で判断すると思うのですが! そりゃ、ちまい媒体の広告とかだったら、一山いくらで出すわけですから、サイトの規模や性質を気にせず広告を出すこともないわけではなさそうですが。

 常識的に考えて、サイトの規模(PVやUU)や、サイトのイメージは気にするのが広告主だと思います。

>広告主だってそれくらいわかってるし、代理店の営業も広告主に「サイト全体のPV数が大きいからこのサイトにバナー出しましょ」なんていうお馬鹿さんはいまどきいない。

 だから、CA自身がそれをやっているんだと思いますけど。で、それがダンピング気味だから、他の代理店もドン引きなのかなと感じますけど。

>とはいえ、1点問題点があって、それが編集記事広告の場合。

 これこそが問題でしょうね。yahoo!を除くメガサイトで、利益率が一番高い広告収入はこのカテゴリーなんじゃないですか。他の会社は知らないけど。SP費的にデジタル予算を捻出して、特設サイトに誘導するための一定期間買い切りで幾ら、というモデルじゃなければ大口のデジタル広告予算なんて裁けないと思いますよ。イタリア街にいる孤児のような代理店ですら、全社全体の利益のうち純粋な出稿が占める割合は随分減っているんじゃないでしょうか。

 本来、アメブロが目指していたのは、芸能人や著名人にブログを書いてもらい、他との差別化を図った上でブログサービスNo.1のブランドを作り、既存媒体の広告を置き換える形で編集記事広告や枠買い切り、連動型広告を増やして黒字化しようという腹だったと思います。それが間違いだったとか良かったとかではなく、ブログが一般化していくなかでは拡大には寄与したと言えますね。

 アメブロ出稿後の報告書は何度も見ましたけど、あまり来訪率が高くはないニコニコ動画mixiから見ても、広告効果は費用と見比べても12分の1ぐらいで、それも、発表会にタレント呼んできて告知をさせた当日にブログに記事を書かせるという仕組みを使ってもやはり少ないです。それだったら、値段が随分下がったスポーツ新聞に記事を書いてもらってネットに上げたほうが、よほど数字は取るんじゃないでしょうか。

 そのうち、新聞記事に出るかもしれませんけれども、詐欺ではないにせよ、もう少し誠実に営業をする余地はおおいにあるだろうというのが現状のアメブロ(CA)で、外形的にBOTの話が先に出たので、いわゆるネット社会からの問題意識が先行したのは仕方のないことだろうと思います。ただ、やはりデジタル押し紙といっても遜色ない水増しと、その水増し分から逆算したときの広告効果の少なさを考えるに、やはりナショナルクライアントのタイアップ先として、アメブロを使うことはむつかしいと考えます。せいぜい、起用されたタレント経由で芸能事務所がアメブロを使って小遣いを稼ぐというのがせいぜいかなと。

 もっとも、ネット広告全体の枠組みと言う意味では、アメブロに限らず幻想がだいぶ剥げてきて、どこで稼ごうか悩む部分も増えてきたというのが実情じゃないでしょうかね…。ああどうしよう。取引全体のボリュームが増えてきても、利益が出ないんですよねえ。